懇親会でぶつけてみた医療用ウィッグのこと
先日、ある大学病院での懇親会があったので行ってきました。その病院の懇親会というのは、2か月に1回の割合で開かれているもので、患者の家族と医療関係者(医師含む)が集まって、日ごろ言えていなかったことや疑問などを意見交換するものです。
大学病院の中では新しい取り組みとして注目されていますが、今回の懇親会はがん患者と院内の関係者が設定されていたので行ってみることにしました。私にはどうしても聞いてみたいことがあったからです。それは「病院側の“抗がん剤治療と医療用ウィッグに対する意識”について」です。
抗がん剤治療と医療用ウィッグは、ともに不可分な関係にあるのに、治療を受けていると、ウィッグを積極的にすすめてくれる先生もあれば、まったく触れない、無関心な医師もいます。また医療用ウィッグのメーカーや販売店を定期的に招いて展示会や説明会を開催している病院もあれば、問合せのあった患者や家族にだけ連絡先を紹介してくれるといった医療機関もあります。
脱毛で苦しむ本人や家族にしてみると、投与と同時に脱毛ははじまるものだから、医師がワンセットで面倒みてくれればありがたいと考えるものです。私も母も抗がん剤のお世話になりましたが、私が入院した病院では展示会があり、母の入院先では、結果的に自分で医療用ウィッグの業者を探すことになりました。このようなことは、全国の病院で決まりをつくって、同レベルの案内を受けられないものでしょうか。
医療とは不可分でも全国統一はむずかしい
懇親会が進行して中盤に差しかかったころ、「他に何かご意見はありませんか?」というので、思い切って挙手し、その件を聞いてみました。私が考えているよりも病院側の医療用ウィッグに対する意識は高く、すでに私が質問したようなインフォメーションサービスは常時案内できるように検討を開始しているということでした。
病院サイドでも「抗がん剤治療と脱毛対策、医療用ウィッグを別々に考えるのは患者の利益にならない、とても不自然なこと」と考えていて、では具体的な方法としてどうするかという段階にまですすんでいるようです。それを聞いて少し安心しました。
ただし問題がいくつかあって、医療用ウィッグは義手や義足のように国からの補助が出ないので、紹介はできても費用は全額実費となること。業者を選定したり紹介したりする場合、病院は何を基準に選定すべきか、偏りや不公平、それによって医療用ウィッグメーカーの商業行為にマイナスの影響が出るのではないかといった点です。さらに言えば、病院が関与した医療用ウィッグについて、どこまで責任をもつかといった問題もあるそうです。
そのような現状を聞いて納得はしましたが、「これらの理由から、全国的に統一して同様の形式で案内するのは無理」ということも語ってくれました。病院側の医療用ウィッグに対する気持ちや今後の見通しが聞けて、とりあえずはとても良かったと思っています。