われ関せずといった感じの医師にビックリ
自分が医療用ウィッグを必要とする身になって初めてわかりましたが、医療とウィッグの間には、姉が言うように“高くて分厚い壁”があることを実体験させられました。
実は、昨年の秋に、姉につづいて妹の私もガン宣告を受け、抗がん剤治療(=脱毛)を余儀なくされました。
「きっと同じ遺伝子が原因なのだから、姉の医療データをもっている同じ病院で診察・治療を受けた方がいい」ということになり、同じ県内の同じ病院で診察を受けました。
私に、抗がん剤治療を予定していると告げた医師の言葉は、それから一呼吸おいて、「医療用のウィッグを用意しておいてくださいね、治療開始から10日後には毛が抜け始めますから早いほうがいいです」と。
姉から聞いてわかってはいましたが、私は「こちらの病院ではお世話していただけないのですか? 紹介してもらうだけでもいいのですが?」と聞き返しました。
すると医師は、「当院では業者の展示会も紹介もしていません。ウィッグは個人個人で好みがありますから」と突き放したような冷たい返答でした。
医療機関が医療用のウィッグを斡旋したり展示会を開いたりすることに賛否両論があることは知っていましたが、精神的なケアやその分野の専門医まで置いているのが当たり前のこの時代に、医療用ウィッグだけは別扱い?
私はそんな思いを抱きながらヒドく落ち込んだのを覚えています。
医療用ウィッグはケアのツールではない?
ガン宣告を受けて、なおかつ抗がん剤の副作用まで覚悟しなければならず、女性にとっては大事過ぎる髪を失うことまで受け入れなければならない状態は、あまりにも過酷すぎます。
医者がそこで手を切ってしまうのは、冷たい暗闇の中で、付き添ってくれていた唯一の道案内人から、いきなり放り出されるのと同じです。
せめてカウンセラーのような人が私を引き継いでくれ、医療用ウィッグの重要性や日常の使い方、手入れの仕方、業者さんやおすすめのサイトなどをアドバイスしてくれたらどんなに救われるでしょう。
私と同じ境遇にいる多くの患者さんは、きっと同様の気持ちを抱えながら、たった1人でウィッグを探し当てていったのだと思います。
姉は数年前に同じ経験をしていましたので、家に帰ってその話をすると、「だから言ったじゃないの。アソコの病院は、治療と医療用ウィッグは完全に切り離しているんだから」と苦笑していました。
結局、姉が愛用しているシルフィというウィッグのサイトを教えてもらって、私も現在は2台の同じ製品を使っています。あんな嫌な思いをするくらいなら、最初から素直に姉の言うことを聞いておくべきでした。
それにしても医療とウィッグは冷たい関係~。患者にとってウィッグは立ち直りの重要な道具なのですから、もう少し医療との一体感があってもいいと思います。