垣根を取っ払った医療用ウィッグを語る集まり

美容師、看護師、医師、ヘルパーさんやケアマネさんが一堂に会して、「抗がん剤治療と脱毛の経験をした患者さんから体験談を聞く」という取り組みを行っているサークルがあります。

医療用ウィッグのことは、「教えてくれるのが当たり前(患者)」、「ウィッグは治療の範疇ではないのでご自分で(医師)」というような距離感・温度差が両者にありましたが、医療用ウィッグを取り巻く関係者が垣根を取っ払って集合し、しかも患者を主役にして体験談を聞くという取り組みは非常に珍しいことです。

最近では病院内にヘアサロンを開設している医療機関が増えましたが、脱毛で悩む患者の頭と向き合っているのに、医療用ウィッグの基礎知識や患者のメンタルな部分について何の知識ももたない美容師が増えているのだそうです。

医療用ウィッグの機能面や構造は製品を検証して勉強すればわかりますが、患者のメンタルな部分は、日常的に接している美容師でも知ることはできません。

患者と医師、患者と美容師など、どちらか一方が一方に要求するような関係ではなく、お互いの気持ちを共有して理解を深めていくことが重要なのかも知れません。

雑談上手になって、“患者の気持ち”をフランクに伝えよう

医療機関に対して「もっとこうして欲しい」といったような患者目線からの要望は良くありますが、「果たして患者は、自分のメンタルな部分を、ダイレクトに医者や美容師に伝えているだろうか」ということを、私は最近になって考えるようになりました。

先にご紹介したサークルでは、体験や時々の気持ちを語る患者さんが、「医療用ウィッグを選ぶとき、被るとき、またそれらについての周囲の対応などを、事細かく吐露している」とレポートしていましいた。立場を意識し過ぎることのない、“フランクで自由な発言や気持ちのやりとり”が理解を深めていったといいます。

そこで、これまでは消極的であった私自身への戒めを含め、患者は患者として「もっと雑談上手になろう」ということを提案したいと思います。

  • 抗がん剤治療、脱毛、医療用ウィッグの着用などは、恥ずかしいことではないと割り切り、自分の気持ちを折に触れて話していこう。
  • とくに院内の美容サロンなどは、患者が美容師に教えるといった割り切りから、思い切って医療用ウィッグの使用感などを伝えることが大事。
  • 医師や看護師に対しても、“診療室での質疑”といったカタイ関係ではなく、検診のとき、見回りのときなどを利用してこれまで以上に話しかけてみよう。

雑談として話しかけると、相手も同じような感覚で気軽に答えてくれます。そうしたやり取りがお互いの理解を深め、医療と医療用ウィッグの関係にも新しい道筋がつけられていくのではないかと考えます。