医療からみた栄養補給のあり方は大半が落第点
がん治療の専門医によると、「がん患者の約半数に体重減少がみられ、これががんの治癒力や進行に大きな影響を及ぼしている」と言います。患者の中には無理やりにでも食事の量を増やして、もとの体重に戻そうとか、抵抗力をつけようとする人もいますが、がんによる体重減少は、ただ食べる量を増やすだけでは必ずしも改善されないのが事実。質と量の両面から、節制した食生活が求められます。
がん細胞は、細胞自身がエネルギーを蓄えようとするので、患者の栄養分を横取りしているような状態にあります。その結果、患者の栄養摂取は妨げられ、体内のエネルギーは想像以上に激しく消耗していきます。筋肉が落ちて、全体にやせ細り、覇気が無いように見えるのはそのため。
入院中は管理栄養士のもとで1人ずつ、症状や目的に合った病院食がメニューになりますが、投与による加療が終わって自宅に戻ってからは、自己管理による食生活となります。患者の食生活や栄養摂取のことだけを考えてくれる家族がいれば問題ありませんが、現実はそれほど恵まれた環境にある人はいません。
家の中にある普通食、レトルト食品やインスタント食品を電子レンジで温める程度で済ませてしまう人も多いはずです。そうなると栄養バランスが崩れ、摂取量が不足するばかりか、脱毛した髪の発毛や歩行機能に必要な骨・筋肉の再生力にも悪い影響が出てしまいます。
医療用のウィッグは何のために被っているかを再認識
多くの病院では、退院前に食生活や運動習慣についての指導が徹底されていますが、自身にあった食事メニュー(献立)などの一覧表資料をもらえなかった人は、次回の検診時に改めてレクチャーを受けるようにしましょう。栄養、抵抗力、体力回復のための食生活と同時に、忘れてはならないのが医療用ウィッグの存在意義です。医療用のウィッグはただ単に脱毛した頭部を補うためのものではありません。
社会復帰・生活復帰を後押しするためのツール、発毛のための理想の頭皮環境をキープして、元気な髪の再生を促すための道具です。ですから、栄養バランスの取れた食生活を継続して抵抗力を付けると共に、「外出しても大丈夫な体力が戻りつつある」と実感できたら、できるだけ早い時期に医療用ウィッグを着用して外出の機会を作りましょう。
術後の注意事項と食生活。医療用ウィッグについて
- 手術後は歩行機能・身体を支える骨格筋は、かなりのスピードで減少する。
- 体重や筋肉量が極端に減少してしまった場合、抗がん剤治療の継続が困難に。
- 体重減少・抵抗力の低下で、抗がん剤の副作用が強く出てしまうことも。
- 口内炎など口腔内の病気が発生し、悪化する危険性がある。
- 「痩せない」、「体重を落とさない」こと。同時に栄養のバランスを取ること。
- サプリメント、栄養補助食品を上手に活用する。
- 毎日の調理が困難な人は、がん患者向けの宅配食でも可。
- 医療用のウィッグは、家の中で無理に着用せずバンダナなど風通しの良いものを。
- ウィッグの手入れが億劫になるので、代用を含めた複数のウィッグを用意。