平均寿命が過去最高。その陰で増加するがん発症率

日本人の平均寿命が男女ともに過去最高になったことが厚生労働省の発表で明らかになった。直近の2017年の日本人の平均寿命は、女性が87.26才で、男性が81.09才。前年度にくらべ女性は0.13才、男性は0.11才、ともに寿命を延ばしたことになる。その要因には以下の3つが考えられる。

  • 先進的な医療の取り組みと予防・予後の周知によって、早期発見・早期治療が周知されるようになったこと。
  • 健康意識が高まり、生活習慣・食習慣、有酸素運動など、それぞれに改善の取り組みがすすみ、個人や企業の間で推進されてきたこと。
  • 福祉環境の充実によって、これまでは引きこもりがちだった高齢者が、積極的にコミュニティに参加できる機会が増えたこと。

とくに生活習慣・食習慣の改善はこの数年のあいだで年齢層を問わずに進捗し、成人病・生活習慣病予防の意識が根付いている。適度な運動に高齢者・中高年層の人々が取り組みだしたこともプラスの影響として大きい。ところでこうした長寿命化と比例して高齢世代のがん発生率が増加している。

厚労省は世代別のがん発症率を明らかにはしていないが、民間の医療機関の発表によると、65才以上の男女で「がんの疑いがある」、または「精密検査の必要あり」と診断された患者数は、この5年間で、0.2~0.3%増加しているとする推計を発表している。

医療用ウィッグメーカーの新たな闘いで低価格化へ

長寿命化を係数で捉えれば驚くことではないとの見解も示しているが、気になるデータではある。ここのところ、抗がん剤治療による脱毛をリカバリーするための医療用ウィッグについて、“高齢者でも気軽に手が届く安価な価格帯のウィッグ”が身近なところで出回るようになった。

国内大手のウィッグメーカー2社に割って入った形でシェア争いに挑んでいるB社は、大手A社が院内でウィッグ展示会を行なっているスグ近くで、「格安の医療用ウィッグ」をうたい文句にフェアを展開している。こうしたやり方がB社の徹底した戦略で、年金暮らしの高齢者からは好評を獲得し売上げはうなぎのぼり。

そこにもってきて、製薬会社・医薬品販売の会社が市場参入に名乗りをあげた。狙いは好調な女性用の医療用ウィッグのシェア切り崩しで、豊富な顧客データが経営資源。こちらは高齢者に的を絞っているわけではないが、これまで市場を牽引してきた大手2社の脅威になっていることは間違いない。

ウィッグと医療は、これまで“近くて遠い親戚”などと言われてきたが、製薬会社が乗り出したことでその距離は少し縮まったと言えるかも知れない。「がん治療に詳しい」、「投薬にも副作用にも詳しい」、実際に「患者からの不安や不便など、頭髪やスキンケアに関するデータも、豊富にもっている」。

メーカー同士の争いは熾烈になるかも知れないが、医療と医療用ウィッグの距離が縮まって価格が安くなることは、利用者にとって有り難いこと。今後私たちは、新たに起っているこうした事柄を注視し、ウィッグの選び方にも新しい見方が必要になっている。安くても高品質なウィッグを見つけたい。