患者こそ主体者~。医療にも医師にも限界はある
ガンの治療効果を上げるためには、個々の患者よって異なる種類と広がりのあるガンの性質を正しく見極めていく必要があるという主旨の説明を医師たちはよく行なっている。それと同時に、患者がもっている前向きな力が最後はその人の未来を決定づけるといったようなことも良く耳にする。
考えてみれば、ガンは免疫力の強さによっても回復の度合いが違ってくるわけだから、それ自体に、「医師の治療+患者の治癒力」が相乗的に働いているといえる。ガンに冒されながら、地球1周に類するようなマラソンを行なったタレントのHは今でも元気。世界のホームラン王も元気。自身が何回もガンに冒されながら、ガンの執刀医を勤めている女医もいる。目的をもっている人は不思議と打ち勝っている。
私自身も3度の手術と何回もの抗がん剤治療を経験してきたけれど、その度に自分を奮い立たせたのは、“治療を医者任せにしない”ということだった。抗がん剤治療に入る前に通販で購入した医療用のウィッグを拠り所にして、ずっと闘ってきた。いまでもそのスタンスは変わっていない。
主人とは大学時代の山岳部のサークルで知り合ったので、体調のいいときは医師の許可をもらって標高の低い国内の山に登っている。山登りに医療用ウィッグは邪魔になるので、下山するまではバンダナの上から厚手の帽子を被って挑む。エベレストの登頂途中で命を落とした登山家も多いが、私はどんな山に登るときも、「どうせ人間の生命はいつか果てる」と開き直るようにしている。
家を起点としない、医療用ウィッグ必携の気ままな日常
岩肌にしがみついて開き直っていると気分がいい。ガンのことや医療用ウィッグのことは登山仲間の全員が知っているから、「ウィッグ被って風に飛ばされてもオレが受け取ってやるぞ」と、からかわれながら登っていく。そういう時間を過ごしていると、病気のことで悩んだりしなくなっていく。
家の中にいると自分のサイズが小さくなっていくばかりで、ガンのことばかりを考えてしまう。そういう思考が免疫細胞の働きにもマイナスの影響を及ぼしてしまうと医師は言っている。みなさんも体調のいい日は、外に出て好きな時間を過ごしてみるようにしてはどうでしょう。特別なプランなど立てなくても、家から離れたところに身を置くだけで心が晴れてくるのではないかと思う。
医療用ウィッグ必携!私が決めたライフスタイル
- バッグやバックパックの中には必ず医療用ウィッグと服を入れておく。
- 外出先から思い立って、美術館や博物館に足を伸ばすこともある。
- 家は自分にとって休憩所(山小屋)のような存在だと位置づけている。
- 主人と外で待ち合わせて、スーパー銭湯に宿泊することもある(食事・宿泊)。
- つねに外界と接することを習慣にすると、クヨクヨ考え込む時間がなくなる。
- 定期診断に行くときも外出先から。家が起点にならないときがある。
ガンになるまでの私は、ほんとうは内向的な性格だった。大学時代に山を知ったおかげで家にこもらずにすんだが、ガンになってからは家を拠点に生活するという当たり前の発想をやめた。1人で家にいる時間が長いと、昔のように、自分と向き合って意味のない暗い対話を始めてしまうから。風変わりと言われても、やりたいことや通したいスタイルがあれば、素直にそうすることで開けることが多い。