ウィッグの紹介といっても医師は大きな責任を負う

このサイトの寄稿文を拝見していると、「医師が医療用のウィッグを斡旋してくれないのはなぜか」とか、「ウィッグも医療の一部なのだから」といったような意見が目立つように思います。

私も抗がん剤治療で脱毛を何回か繰り返し、ウィッグのお世話になっている1人ですからその気持ちは分かります。

しかし医師はほとんどがめまぐるしい医療現場の中にあって、多い日では1日に3件程度の外科的手術をこなしています、平均的な睡眠時間は4時間程度で、外来患者(初診)の対応、経過観察(再診)など、私たちが目に触れることのある業務だけでも過密です。

私の個人的な意見としては、そのように多忙な医師に、医療用ウィッグの面倒まで負わせてしまって良いのか、「私なら反対票を投じる」ということです。

斡旋や紹介などと私たちは簡単に口にしますが、そこにはすべて“責任”という重たい二文字が付いて回ります。さらに言えば斡旋してもらったウィッグに不具合があったとき、患者は医師にそれを告げに行ったり文句を言いに行ったりするでしょう。

これでは医師は“よろず相談所”と変わらない人間になってしまいます。自分で探せるものを医者や医療機関のスタッフに頼んで、肝心の本職に携わる時間を損なわせてもいいのでしょうか。

医師にウィッグ選びなどさせて、ホントにいいの?

これは「どこまでが医療で、どこからが医療と別の領域か」という線引きの問題でもありますが、医療機関や医師は、加療・治療、経過観察、リハビリ指示、寛解見届けまでが領域であり専門職です。医療用ウィッグもその一環にあるという見方は、間違ってはいないかも知れませんが、「医師や医療機関に依存しなければ解決できない事柄」ではありません。

医師のウィッグ斡旋に反対する理由

  • 患者が自ら選択して購入できるモノ、判断できるモノについては医師や医療機関の手を患わすべきではない。
  • 医者も医療用ウィッグを被った経験者ではない。どんな根拠があって斡旋するのか、肝心の所が曖昧で不明確。
  • ウィッグ製品のフィット感や良い悪いという評価には個人差がある。薦められたモノがすべての人に良いわけではない。
  • 医者には医者の本業がある。その時間を削ってまでウィッグと向き合うのは本末転倒。患者にとっての利益もない。

四国の松山のほうにある総合病院では、ボランティアが専門に医療用ウィッグのコンシェルジュグループを立ち上げ、希望者に紹介・斡旋を行なっているそうです。

医師といえども自分でウィッグを装着した経験のある人はいない(女性用なので)わけですから、もともと斡旋やおすすめなどできません。

しかし経験者によるこのようなボランティアなら、受ける側には心強く、紹介にもそれなりの根拠があって良いのではないでしょうか。私はこのような形式がベストだと思っています。